ハックルベリー写真館
ハックルベリー写真館
●ストーリー仕立てでお楽しみください●
机の上には動かない砂時計。
部屋の中では誰かが電話をかけている。電話をかけているのはやっぱり
ボクだ。
電話は繋がらないのかもしれない。ボクだとわかれば切られてしまうかもしれない。
それでもボクはあの日から一つの番号へ向けて電話をかけ続けている。
ボクの祈りは光の速さを超えて、時の流れを遡るかもしれない。
十年前。ボクが彼女と別れたとき、ケンジは六年生になったばかりだった。
ケンジは小学6年生で、母さんと二人暮らし。
母さんは私立中学に行かせようとして家庭教師をつけた。
家庭教師のコーキチくんはカヌーが大好きだ。
彼の影響でケンジもカヌーが大好きになった。
が、母さんは危ないと言って、乗ることを許してくれない。
今日は面会日。ケンジは父さんのマンションへ行く。
近くの池でボートに乗るのを楽しみにして。
ところが、父さんの部屋にはカオルと名乗る女性がいた…。
ケンジが忘れていったパドルを返すかわりに、一分だけ話をしてというカオルさん。
「ボクに気に入られようとして、おもしろそうって言ったんだろう?」
「私はただ、ケンジくんと話がしたいのよ。
カオルさんは、自分の住所と電話番号をメモし、ケンジに渡す。
どうか電話がかかってきますように…
ある日のケンジの家。
同級生のアベチカコがいる中、コーキチくんがやってくる。
「君は誰だ?」「妻のチカコです☆」
お姉さんの紹介と言う条件を引き換えに、闇の協定を結ぶアベさん。
「あ、アベチカコ!!」
コーキチくんが話をしていたセコ先輩から、
長良川についての話を聞き、思いを膨らませるケンジ。
パドルを使いたいケンジ。
ボクが提案する方法をはねのけ、ケンジは走り去ってしまう…
ケンジをよそに、カオルさんの家に行くボク。
ケンジに連れ戻されるボク。
「一時間も何、話してたんだよ。」
「あーあ。難しいこと考えないで、みんな一緒に暮らせればいいのにな」
楽しそうな風景。しかし…
「ボクのカヌーには一人しか乗れないんだ。」